ロボット支援心臓手術(ダビンチ:Da Vinci)

ダビンチ手術について
心臓のダビンチ手術は、正式には「ロボット支援下心臓手術」と呼ばれます。ダビンチは手術に使用するシステムの名称で、実際に患者様に手術操作を行うペイシェントカートと、執刀医が座り操作するサージョンコンソール、高精細な映像を映し出すビジョンカートの3つのユニットで構成されています。
ダビンチXi_コンポーネント.jpgのサムネイル画像

手術はペイシェントカートから伸びた4本のアームに鉗子やカメラを取り付けて、患者様の体内へ小さな傷から挿入し手術を行います。執刀医はサージョンコンソールに座り、ペイシェントカートを操縦して手術を進めます。執刀医の指示でアームに手術器具を付け替えるなど、患者様のそばで直接手技を行う心臓外科医と連携し、複数の医師がチームとなって手術を行います。

当院で実施可能なロボット支援下心臓手術
  • 弁形成術、弁置換術
  • 冠動脈バイパス術(グラフト採取に使用)
  • その他(ロボット使用が低侵襲化に有用と思われる手術には個別に患者様と使用に関して相談します)

ロボット支援下心臓手術の利点
  • 患者様への負担軽減
従来の開胸手術とは異なり、胸骨を切らずに肋骨の間から約4センチの小さな傷で手術を行うため、術中の出血量が少なく、術後の回復も早く患者様への負担が軽減されます。入院期間が短縮され、早期の社会復帰が可能となります。また、手術の傷が目立ちにくいという利点もあります。

  • より精密な手術の実現
執刀医は従来の手術に比べ、より明るく鮮明な3D立体画像を見ながら手術を行うことができます。必要に応じて画像を拡大したり、従来の手術では不可能な角度からの映像も見ることができます。また手ぶれの心配がないために、より正確で精密な手術操作が可能となります。

  • 従来のMICS手術にはない技術的特長
ダビンチの鉗子には関節機能が備わっているため、当院で従来提供していた完全内視鏡下MICS(低侵襲心臓手術)の鉗子では不可能だったより自由で精密な動きが可能となりました。これにより、狭い視野でもより確実で安全な手術操作を行うことができます。

ロボット支援下心臓手術をお受けいただく前にご理解いただきたいこと
ロボット支援下心臓手術は多くの利点がある一方で、以下の点についてもご理解いただく必要があります。

適応について
  • すべての心疾患や患者様に適応できるわけではありません(現在保険診療として施行可能な術式は弁形成、弁置換のみです)
  • 患者様の病状、心臓の解剖学的条件、全身状態などを総合的に判断し、最適な術式を選択いたします。
  • 場合によって、従来の開胸手術やMICS手術の方が適している患者様がいらっしゃいます。


手術について

  • 患者様の安全を最優先に、必要に応じて手術中に開胸手術への移行をする場合があります。
  • 手術時間が従来の手術より長くなる場合があります。
  • 治療効果や回復の過程には個人差があります。

 

当院の特徴
北海道唯一のロボット支援下心臓手術ができる総合病院

ダビンチシステムを用いた手術は、泌尿器科や婦人科などでは比較的多くの病院で行われていますが、心臓血管外科領域でのダビンチ手術には、より厳格な施設認定と専門的な技術習得が必要となります。そのため、2025年8月現在、北海道で心臓のダビンチ手術を実施できるのは当院を含めわずか2施設のみという、極めて限定された先進医療です。その中でも当院はダビンチ手術が行える唯一の総合病院です。心臓血管外科や循環器内科では対応困難な、様々な併存疾患をお持ちの患者様に対しても、他科との綿密な連携によってより安全な心臓手術が可能です。

オーダーメイド治療 ~患者様一人ひとりに最適な治療選択を~

患者様の病状や身体の特徴は1人ひとり異なり、状態によってはダビンチ手術が適さない場合もあります。当院では、ダビンチ手術、従来の開胸手術、完全内視鏡下MICS手術、循環器内科によるカテーテル治療、薬物療法、保存的治療などを含むすべての治療選択肢を選択することができ、その中から、最善の治療方法を心臓外科医、循環器内科医、メディカルスタッフ等で構成されるハートチームで検討、最終的に患者様と相談し治療方針を決定しています。患者様への説明の際には、心臓のイラストやご自身のCT、エコー画像をご覧いただきながら、平易な言葉で時間をかけてご説明することを心がけています。
当院では、ダビンチ手術の導入にあたり、十分な研修と準備期間を経て安全な手術体制を整えております。経験豊富な心臓外科チームが、患者様一人ひとりに最適な治療方針をご提案いたします。

ご不明な点やご心配なことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

担当医師

  • 渡邊 隼
  • 杉本 聡