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低侵襲心臓手術(MICS)
MICSとは
胸を大きく切開せずに、従来よりも小さい創で行う手術のことを低侵襲心臓手術(MICS;通称ミックス)と言います。通常、ほとんどの心臓外科手術では胸骨や肋骨を切開して手術しますが、骨が完全に元に戻るまで3ヶ月ほど要します。しかしMICS(ミックス)であれば胸骨を温存することができるため、術後より早期に社会復帰が望めます。 | 大動脈弁置換術の場合(僧帽弁は3cm) |
●従来の心臓手術 | ●MICS | ||
[骨] | [創の大きさ] | [骨] | [創の大きさ] |
MICSのメリット
- 創部感染症が少ない
心臓の手術後の重篤な感染症のひとつである縦隔炎や胸骨骨髄炎の発生が少ないことが報告されています。特に胸骨切開部が感染する感染性骨髄炎は難治性の合併症ですが、胸骨をまったく切らないアプローチでは、胸骨感染は理論上発生しません。
- 早期社会復帰
従来の方法では、手術中に切った胸骨の治癒を待つため、術後約3ヶ月の間は重いものを持つことは禁止しています。腕を上げることも胸骨の治癒によくないので、避けていただいています。これに比べてMICSでは運動制限はありません。
- 手術による出血が少ない
創が小さく、胸骨という大きな骨を完全に切らなくてすむので、手術中の出血は少なくてすむことが報告されています。輸血の必要性も従来よりも低くなると考えています。
- 美容面
胸部正中切開(従来の方法)では、創がシャツから見えたり、水泳、温泉入浴時では創が大きく目立ったりするため、いつまでも手術創が気になってしまう方がおられます。実際にMICSを受けていただいた患者さまからは、「手術の創が小さくて目立たない」と、とても喜んでいただけております。
MICSのデメリット
MICSには以下のような欠点があります。
- 限られた術野のため高度な技術や熟練を必要とします。
- 難易度が高く、従来の方法よりも手術時間が延長することが報告されています。
- 心機能や呼吸器機能が悪い患者様などは術後リスクが高まる可能性があります。よって、MICS適応外となり、従来の方法を提案させていただく可能性があります。
MICSに適した特徴(一例)
- 上行下行大動脈、腹部大動脈、腸骨動脈に著名な石灰化、動脈硬化、狭窄、動脈瘤がない
- 極端な低体重や高体重、高体表面積でない
- 重症心不全の既往がない
- 開心術の既往がない
- 肺切除や肺気胸の既往がない
- 低肺機能、間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患など片肺換気の不安がない
※詳細に関しましては、診察時にお尋ねください。
適応手術(適応疾患)
当院では2012年より低侵襲心臓手術(MICS)を開始し、数多くの症例を行っております。
- 冠動脈バイパス手術(狭心症、心筋梗塞)
- 心臓弁膜症手術(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁)
- 不整脈 MAZE手術(心房細動)
- 左心耳切除術
【当院の特徴】
外来にて患者様およびご家族様にご説明し、時間をかけて理解していただき最終決定を行っております。MICSのメリットやデメリットは患者様個々の状態で大きく変化します。そのため患者様ごとにアプローチ法を検討し、最善のアプローチ方法を選択することが重要です。患者様によってはどのアプローチ方法も選択でき、それぞれの優劣がつけにくいことも多いです。
適応可能なアプローチ方法、メリット、デメリットに関して札幌孝仁会記念病院心臓血管外科に所属する医師全員で症例検討カンファレンスを行なっております。お気軽にご相談ください。
弁膜症手術に占めるMICS