集学的な脳腫瘍の治療
集学的な脳腫瘍治療とは?
脳腫瘍とは
脳腫瘍は頭蓋内にできるがんの総称です。良性のものや悪性のものがあります。脳腫瘍は、頭蓋内の脳や周辺組織から発生する「原発性脳腫瘍」と、別の臓器で発生したがんが頭蓋内に転移した「転移性脳腫瘍」に分けられます。日本の地域がん登録全国推計値によれば、原発性脳腫瘍の発生は年間で10万人あたり3.6人、米国の統計では18人と報告されています。脳腫瘍の特徴として、多様性があります。すなわち、頭蓋内の様々な部位の、様々な細胞から発生するということです。脳腫瘍の症状としては、がんが大きくなることで頭蓋内の圧が高まるために起こる「頭蓋内圧亢進症状」(頭痛、吐き気、意識障害など)とがんが発生した場所の脳機能の障害によって起こる「局所症状(巣症状)」(脳の各部位が担う機能に依存)があります。
集学的な治療
脳腫瘍の治療は、手術による全摘出ができれば良いですが、悪性の脳腫瘍の中で最も発生頻度の高い神経膠腫(グリオーマ)などでは、周辺の脳に染み込むように広がり、正常な脳との境目が不鮮明であることが少なくありません。従って、外科治療(手術)のみによる治療だけではなく、放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせる、「集学的な治療」が行われます。複数のがん治療法を組み合わせることで、より高い治癒率をめざすことができます。
対象となる疾患
良性
脳下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽腫など
悪性原発性
神経膠腫など
悪性転移性
各種転移性脳腫瘍
当院で行う集学的な治療
外科手術
脳腫瘍を外科的に除去する方法です。当院では、手術前のMRIやCTだけではなく、最先端の術中MRIや術中CTとナビゲーションシステムの組み合わせにより手術を進めます。すなわち、リアルタイムでがん周辺の正確な位置情報を把握しつつ、がん摘出状況を確認して、安全を確保して最大限の切除を両立させることが可能です。摘出率の向上は、予後に大きく影響します。また術前の脳機能マッピングと術中の脳機能解析により,言語野や運動野といった重要な機能を持つ脳の領域を確認しながら脳腫瘍の摘出を行います。さらに,腫瘍が言語中枢付近に存在する場合などについては、言語機能を維持したまま最大限の腫瘍摘出を実現するために覚醒下での摘出手術も行い、運動麻痺や言語障害といった術後合併症予防が可能となっています。
放射線療法
- 最新でありかつトップランクの治療機器(サイバーナイフ・トモセラピー)を用い、低侵襲で最大効果を出す放射線治療を行っています。適応は,正常組織との境界が明確な転移性脳腫瘍で、全脳照射や定位放射線治療が非常に有効です。
- 2018年夏には最新のプロテウスワンによる陽子線療法もこれらに加わる予定です。原発性脳腫瘍や頭蓋底腫瘍などへの治療提供が期待されます。
化学療法
脳腫瘍においては手術や放射線治療の補助療法として、一部の抗がん剤を選択します。また、副作用の低減と有効性の向上が期待される様々な分子標的薬(ベバシズマブ、ラパチニブなど)についても積極的に使用していきます。
脳腫瘍に対する新たな治療法~腫瘍治療電場療法
(NovoTTF-100Aシステム)について~
初発膠芽腫の場合、可能な限り手術で腫瘍を摘出、術後にテモゾロミドを併用する放射線治療、その後テモゾロミドによる維持化学療法、という標準治療が確立されています。(NovoTTF-100Aシステム)について~
腫瘍治療電場療法はこのテモゾロミドによる維持化学療法を開始するタイミングで始めます。
再発膠芽腫の場合、可能であれば手術や放射線療法、化学療法などを行い、その後腫瘍治療電場療法による治療を開始します。ただし再発膠芽腫は保険適用外で、自由診療となっています。
2017年12月、一定の基準を満たす医療機関において保険による腫瘍治療電場療法が適用となりました。
当院でも指定の講習を受講した医師がおり治療可能です。
(治療の概要についてはこちらのビデオを参考にしてください)
- 腫瘍治療電場療法については、「患者様ご説明用小冊子_2019」をご覧ください。
※詳細については、下記をご参照ください。
ノボキュア社ホームページ
https://www.optune.jp/
※画像、動画はノボキュア社より提供
高度医療機器
- 術中MRI
- O-arm
- サイバーナイフ
- トモセラピー
- 64列PET-CT
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