小児科

小児科の研修は、必修として4週以上を協力型臨床研修病院にて行うものとする。

1.協力型臨床研修病院
・社会医療法人母恋 天使病院(札幌市)
・北海道医療センター(札幌市)
2.到達目標
一般目標
小児科及び小児科医の役割を理解し、小児医療を適切に行うために必要な基礎知識・技能・態度を修得する。

行動目標
(1)病児一保護者(母親)一医師関係
①病児を全人的に理解し病児・保護者(母親)と良好な人間関係を確立する。
②医師、病児・保護考(母親)がともに納得できる医療を行うために、相互の了解を得る話し合いができる。
③守秘義務を果たし、病児のプライバシーヘの配慮ができる。
④成人とは異なる子どもの不安、不満について配慮ができる。

(2)チーム医療
①医療チームの構成員としての役割を理解し、他職種の職員と協調し、医療・福祉・保健などに配慮した全人的医療を実施することができる。
②指導医や専門医・他科医に適切なタイミングでコンサルテーションができる。
③上級及び同僚医師や他の医療従事者と適切なコミュニケーションがとれる。
④同僚及び後輩への教育的配慮ができる。

(3)問題対応能力
①病児の疾患の問題点を解決するために情報収集して評価し、当該病児への適応を判断できる(evidence-based medicine)。
②指導医や専門医・他科医に病児の疾患の病態、問題点およびその解決法を提示でき、かつ議論して適切な問題対応ができる。
③病児・家族の経済的・社会的問題に配慮しその適切な対応ができる。
④当該病児の臨床経過およびその対応について要約し、症例呈示・討論ができる。

(4)安全管理
①医療事故防止および事故発生後の対処について、マニュアルに沿って適切な行動ができる。
②小児病棟特有の院内感染とその対策について理解レ対応ができる。

(5)外来実習
①外来実習において小児期のいわゆる“common disease” の診かた、家族(母親)とのコミュニケーション、対処法を学ぶ。予防接種の実際について学ぶ。

(6)救急医療
①小児救急疾患について病児の診察方法、病態の把握、対処法を学ぶ。
②小児救急外来を訪れる保護者の心配・不安に対する対応法を学ぶ。

3.経験目標
(1)医療面接
①小児ことに乳幼児に不安を与えないように接することができる。
②小児とコミュニケーションがとれるようになる。
③保護者(母親)から的確に病歴(主訴、現病歴、発育歴、既往歴、家族歴、予防接種歴)を聴取・記録できる。
④保護者(母親)に指導医とともに適切に病状を説明し、指導できる。

(2)身体診察
①小児の全身の観察(バイタルサイン、動作・行動、顔色、元気さ、栄養状態など)ができ、記載できる。
②小児の頭頚部、胸部、腹部、骨・関節・筋肉系、神経学的診察ができ、記載できる。
③小児の診察所見について年齢を考慮した生理的所見と病的所見の鑑別ができる。

(3)臨床検査
臨床経過、医療面接、身体診察から得られた情報をもとに必要な検査の適応を判断でき、年齢を考慮した結果の解釈ができる。
①一般尿検査(尿沈流顕微鏡検査を含む)
②便検査(潜血、中卵検査)
③血算・白血球分圃
④血液型判定・交差適合試験
⑤動脈血ガス分析
⑥血放生化学的検査(,肝機能、腎機能、電解質、代謝を合む)
⑦血清免疫学的検査(細菌・ウイルスの血清学的検査および抗原迅速検査を含む)
⑧細菌学的検査・薬剤感受性試験(検体の採取を含む)
⑨前肢検査
⑩心電図検査
⑪超音波検査
⑫単純X線検査
⑬造形X線検査
⑭X線CT検査
⑮MRI検査
⑯核医学検査
⑰脳波検査

(4)基本的手技
①小児(新生児、乳幼児を含む)の採血ができる。
②小児の皮下注射、点滴、静脈確保を実施できる。
③腰椎穿刺ができる。
④胃管の挿入、胃洗浄ができる。
⑤導尿ができる。
⑥洗脳・高圧淀脳ができる。

(5)基本的治療法
①小児の基本的治療法の適応を決定し適切に実施できる。
②病児の年齢、疾患などに応じて療養指導ができる。
③小児に用いる薬剤の知識と薬用量、使用法を理解し、薬物治療ができる。
④病児の年齢、疾患などに応じた基本的な輸液ができる。

(6)成長発育に関する知識の修得と経験すべき症候・病態・疾患
①成長・発育と小児保健に関わる項目
ア.母乳、調整乳、離乳食の知識と指導
イ.乳幼児期の体重・身長の増加と異常の発見
ウ.予防接種の種類と実施方法および副反応の知識と対応法の理解
エ.発育に伴う体液生理の変化と電解質、酸塩基平衡に関する知識
オ.神経発達の評価と異常の発見
②一般症候
*体重増加不良、哺乳力低下 *発達の遅れ *発熱 *脱水・浮腫 *発疹・湿疹 *黄疸 *チアノーゼ *貧血 *紫斑・出血傾向 *けいれん・意識障害 *頭痛 *耳痛 
*咽頭痛、口腔内の痛み *咳・喘鳴、呼吸困難 *頚部腫瘤、リンパ節腫脹 *鼻出血 
*下痢、便秘、血便 *腹痛、嘔吐 *四肢の疼痛 *夜尿、頻尿 *肥満、やせ 
③頻度の高い疾患、重要な疾患
新生児疾患
*新生児黄疸 *低出生体重児 *新生児一過性多呼吸
感染症、呼吸器疾患、消化器疾患
*発疹性ウイルス感染症(麻疹、風疹、水痘、突発性発疹、手足目病など)
*その他のウイルス性疾患(流行性耳下腺炎、インフルエンザなど)
*小児細菌感染症、溶連菌感染症 *急性咽頭炎、扁桃炎 *クループ
*急性気管支炎、肺炎、細気管支炎、RSウイルス感染症 *急性胃腸炎、ロタウイルス感染症
アレルギー性疾患
*気管支喘息 *アトピー性皮膚炎、蕁麻疹 *食物アレルギー
神経・精神疾患
*てんかん *熱性けいれん *髄膜炎、脳炎・脳症 *精神運動発達遅滞
腎疾患
*尿路感染症 *ネフローゼ症候群 *急性腎炎、慢性腎炎
先天性心疾患
川崎病
リウマチ性疾患
*若年性関節リウマチ *全身性エリテマトーデス
血液疾患・悪生腫瘍
*貧血 *小児癌、白血病 *血小板減少症、紫斑病
内分泌・代謝疾患
*低身長、肥満 *糖尿病

(7)小児の救急医療
①重症度及び緊急度の判断ができる。
②発熱の小児に対して適切な対応ができる。
③脱水症の程度が判断でき、応急処置ができる。
④喘息発作の重症度を判断でき、中等症以下の病児の応急処置ができる。
⑤けいれんの鑑別診断ができ、けいれん状態の応急処置ができる。
3.研修プログラム
(1)病棟実習
入院患者を受け持ち、小児における総合診療、チーム医療、安全管理、基本的診療(診断・検査・治療)手技、院内感染、新生児・未熟児医療などについて研修する。
(2)外来実習
小児のプライマリ・ケア、common diseases、乳幼児健診、予防接種、保護者の心理の把握・対処などについて研修する。
(3)救急医療(夜間)
小児救急疾患の体験、重症度および緊急度の判断、応急処置・対処法、他科医との連携などについて研修する。
4.教育に関する行事
(1)オリエンテーション
・研修最初の1週間に院内諸規定、施設設備の概要と利用方法、研修医心得などについて指導する。
・指導医により各種検査方法、病態に関するレクチャーを2~3ヶ月間に行う。
(2)カンファレンス
・小児科カンファレンスを時に応じて行う。
5.週間スケジュール

標準スケジュール
  AM PM
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