心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)

心拍動下冠動脈バイパス術とは
心臓に栄養を供給している冠動脈が細くなったり詰まったりした病気(虚血性心疾患)に対して、心臓の血流を改善する目的で心臓血管外科が行うバイパス手術の術式で、人工心肺を使用して心臓を止めて行う従来の術式に対して、人工心肺を使用せず心臓を動かしたままバイパスを行う手術を心拍動下冠動脈バイパス術、通称OPCAB(オプキャブ)といいます。
人工心肺とは心臓を止めている間、心臓と肺の代わりに血液を酸素化し体全身に循環させる装置です。装着するにはヘパリンという薬で全身の血液を一時的に凝固しない状態にし、1cm前後の太さのチューブを心臓と大動脈に挿入する必要があります。人工心肺を使用している最中は血液が薄まり、血圧が低い状態で維持されます。


OPCAB手術の方法
全身麻酔をして、胸を縦に切開します。
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吸盤がついた固定器(スタビライザー)などを使用して、心臓を吻合しやすいポジションにします(写真上)。あらかじめ採取しておいたグラフトを、心臓が動いたままの状態で2-3mmの冠動脈に吻合します(写真下)。グラフトには胸骨の裏を走行する内胸動脈や腹腔内の右胃大網動脈、下肢の静脈(大伏在静脈)などを使用します。

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通常3本から5本くらいのバイパス吻合を行います。
吻合する本数にもよりますが、手術時間は4~6時間くらいです。


従来の手術との違い
心臓を動かしたまま2-3mmの冠動脈に血管を吻合するため、術者に要求される技術は上がりますが、その分人工心肺を使用しないため、術中の出血や脳梗塞などのリスクが減少するほか、術後の回復も早くなります。


また、当院では胸骨切開を行わず、小さな傷で冠動脈に複数のバイパスを行う手術を開始しました。解剖学的な制限はありますが、適応となる患者様には創部の痛みの軽減や、感染リスクの低下など、メリットの多い手術です。

 
当院での冠動脈バイパス術
当院では鈴木医師渡邊医師杉本医師が担当し、問題がない限り心臓拍動下冠動脈バイパス術を行っています。

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