大動脈瘤

大動脈瘤とは
心臓から送り出された血液は体の中で一番太い血管である大動脈に流れ込みます。そこから血管が枝分かれをして体の各部位へ血液が流れますが、この枝分かれする前の直径1.5~3cmくらいの動脈、大動脈が何らかの原因で膨らんだ状態を大動脈瘤と呼びます。
大動脈瘤の原因は動脈硬化が最も多く、そのほかに感染、ケガ、生まれつき血管の壁が弱い場合などがあります。


大動脈瘤の分類
 
  • 形の分類
    紡錘状:瘤の立上がりがなめらかな瘤(図1)
    嚢状:片側性で瘤の立上がりが急な瘤(図2)
 
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  • 大動脈壁による分類
    真性:大動脈の壁が保たれている瘤
    仮性:大動脈の壁がなくなっていて、周りの組織が被膜となっている瘤
    解離性:大動脈の壁が内膜と外膜の2層に剥離している瘤

  • 場所による分類(下図左)
    胸部:横隔膜より心臓に近い部分にある瘤(下図中)
    腹部:お腹(腎動脈が出ているところよりも下)にある瘤(下図右)
    胸腹部:肝臓や腸を栄養している血管(腹腔動脈に)を巻き込んで広がる瘤

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瘤の形(嚢状、紡錘状)やその原因(感染性、外傷性など)、大動脈壁の性状(真性、仮性、解離性)、できた場所(胸部、腹部)などを大動脈瘤の前に付けて呼びます。例えば感染が原因の場合は感染性大動脈瘤、胸にできたものは胸部大動脈瘤です。しかし、ほとんどの場合の原因が動脈硬化のため、動脈硬化性大動脈瘤とは呼びません。


症状
胸にできた動脈瘤(胸部大動脈瘤)では、声のかすれや飲み込みにくさを感じることもありますが、動脈瘤による症状がある患者さんが少数派です。お腹にできた動脈瘤では、横になってお腹に拍動するしこりのようなものを自覚される方もいますが、ほとんどが無症状です。解離性大動脈瘤は拡大することによる自覚症状はありませんが、過去に急性大動脈解離を発症した方が大動脈瘤に進展します。感染や炎症が原因の動脈瘤では、発熱や鈍い痛みを自覚する方もいらっしゃいます。
大動脈瘤の症状は自覚されない方がほとんどですが、大動脈瘤が破裂すると激烈な痛みを生じ、すべての患者さんで出血によるショックで手術が間に合わなければ死に至ります。
 

診断に必要な検査
  • CT検査
    ~大動脈瘤の大きさや場所、周囲組織との関係、血管壁の性状など、大動脈瘤の診断や治療に必要なほぼすべての情報がこの検査でわかります。


治療
現在、大動脈瘤の破裂を予防する薬はありません。
破裂を予防する方法、または破裂してしまった患者さんを救命する方法は手術しかありません。
 
  • 人工血管置換術(胸やお腹を切開して瘤を切除し、人工血管に代える手術です)
  • ステントグラフト治療(血管の中にステントグラフトを入れて、動脈瘤を補強する手術です)

どちらも全身麻酔をかけて手術を行います。