形成外科

当科の特徴
 形成外科は、外科の一分野であり、主として体表面とそれに近い組織、器官の先天異常、外傷、腫瘍などによる障害に対し、これを機能的にはもちろん、形態的にもできるだけ正常に再建することを目的として発展してきました。特定の専門臓器を持たず、体表面の異常に対し、”より正常に近く、より美しく治す“ことを専門としています。頭のてっぺんから爪先まで、外から見える部分全般が治療対象です。
 生命の維持だけを目的とするのではなく、変形、醜形に対する治療を行うことにより、精神的苦痛を取り除き、社会復帰の手助けになることや、生活の質を向上させることを目指しています。
対象疾患
顔面、体表面の外傷
 きりきず、すりきず、やけどなど体表面の外傷は形成外科の専門分野です。初期治療によって治るまでの期間や、きずあとの目立ち方に大きく差ができます。きずあとを全く残さずに治癒させることはできませんが、専門的縫合技術により、できるだけ目立たないきずあとで済ませることが可能です。
 やけど(熱傷)に関しても、専門的治療が可能です。重症度に応じて手術、保存的治療など適切な治療法を提案いたします。ただし、全身管理が必要な広範囲熱傷例や小児の入院適応例については当院での治療は困難なため、初期治療後、専門施設への紹介となる場合があります。
 動物咬創は適切な初期治療が行われないと、高頻度で感染し、治療に難渋することが多いので、早めの受診をお勧めします。新鮮外傷に関しては、外来診察日以外でも診察可能な状況であれば対応いたします。受診の際はお問い合わせください。

皮膚・皮下組織の腫瘍
 ほくろ、粉瘤、脂肪腫などのありふれた良性のものから、皮膚癌など悪性のものまで、体表面の様々なできものに対する治療を行います。基本的に手術による切除を行いますが、疾患によっては液体窒素による凍結療法など切らずに治療できるものもあります。
 切除前に診断がつかない場合でも、生検(組織の一部を採取し、顕微鏡で観察)を行い、その結果をもとに追加治療を行うことが可能です。切除による醜状変形が最小限となるよう、適切な再建も併せて行います。
 皮膚腫瘍外科分野指導医が在籍しておりますので、切除後の整容面だけでなく、腫瘍そのものに対しても、適切な方針のもと安心して治療を受けていただくことが可能です。

顔面骨折・頭蓋顎顔面外科
 手足の骨折は整形外科が得意とするところですが、顔面の骨折は形成外科の得意分野です。
骨折に伴う顔面の変形や、かみ合わせの異常などに対しての治療を行っています。
 当院では頭蓋顎顔面外科学会専門医が在籍しております。顔面骨折は一般的に受傷2週間以内で手術を行うことが多いですが、新鮮例のみならず、未治療のまま変形が残ってしまった症例に対する顔面骨骨切り矯正も可能です。
 外傷に起因するものや症候性の顔面骨格変形に対する治療は保険診療で手術が可能です。

治りにくい傷の治療
 形成外科は創傷治癒のスペシャリストでもあります。治りにくい傷の治療にも携わります。
局所の血の巡りが悪くなる(虚血)が原因となる病態が多くを占めますが、何もしていないのにすねや足に傷ができてなかなか治らない、というような病態に対して、原因の検索と局所の創管理を行います。傷の状態の評価を行い、循環器内科や心臓血管外科、整形外科などと協力して創部の治療を行います。褥瘡に対しても適切な創部の評価を行い、必要に応じて外来にて切開、デブリードマン、洗浄などの局所処置を行います。
当院では創傷外科学会専門医が在籍しております。創の状態が改善し、治癒傾向が出てきた場合には手術による創閉鎖も行うことができますが、寝たきりや廃用・介護力の不足など、褥瘡ができる環境が改善する見込みのない症例に対しては、褥瘡を主訴とした入院加療は行いません。 

きずあと、ケロイド、瘢痕拘縮(ひきつれ)
 新鮮外傷だけでなく、昔のきずあとに対する治療も行います。顔面の目立つきずあとに関してはきれいさっぱり消し去ることはできませんが、手術により目立ちにくいきずあとに作り替えることが可能です。受傷からおよそ半年経過していれば修正術は可能ですので、きずあとに悩まれている方はご相談ください。
 顔面以外でも昔の手術のきずあとなどが気になる場合にはご相談ください。ひきつれて動かしにくい、などの症状もZ形成術などの手術により改善できる可能性があります。
 ケロイドに関しては必ずしも手術が適切でない場合がありますが、その際にも外用や注射など、症状を和らげる治療が可能です。

眼瞼下垂
 加齢やコンタクトレンズの使用などにより、まぶたを引き上げるための組織が緩み、瞼が下がって視野が狭くなる病態です。症状が進行すると常におでこにしわを寄せて目を開けることになり、頭痛や肩こりの原因となることもあります。手術により開瞼を容易にすることが可能です。基本的に局所麻酔での手術ですが、腫れにより視野が狭くなるので、入院で治療を行います。
 整容目的で無く機能改善目的の手術は保険診療で可能です。

腋臭症(わきが)
 精神的緊張で腋汗が増える、自分でも臭うし、他人からも指摘されるといった状態で社会生活が困難となっている症例では手術による改善が見込まれます。手術適応となる症例は軟耳垢(耳あかが湿っている)の方に多くみられます。当院では診察時に明らかな腋臭が他覚的に確認できる症例に限って、皮弁法により保険適応での手術を行っています。術後患部安静が必要なので、基本的に入院加療で治療を行います。

陥入爪、巻き爪変形
 深爪や日頃小さい靴を履いているなど、普段の生活習慣が原因となっていることがほとんどですが、患部の刺激により肉が盛り上がってしまっているような状態では局所麻酔下に抜爪を行っています。抜爪による症状改善後もそのままではじきに再発するため、生活習慣、爪の切り方などの指導も行います。明らかな爪床変形が原因と考えられる場合には根治のため爪床形成術を行う場合もあります。

他科再建、合同手術
 形成外科は切除(悪い部分を切り取る)よりもむしろ再建(ほかから組織を持ってきて作り直す)を得意としています。手術により悪い部分を切除したいけれど、そうすると縫って閉じられない、あるいはひどいひきつれになってしまう・・・といった困ったとき、どうにかやりくりして空いた穴を塞ぐ、といった形で手術の幅を広げ、質を高めるためお手伝いすることが可能です。その際には主治科とともに手術に参加させていただき、術後の創処置などで関わらせていただきます。